「奥の菊道」俳句会
令和5年10月31日締め切り分 応募句より 井芹眞一郎 選
一席 庭の木々何やら楽し小鳥来る 熊本市 稲田 夏子
(評)秋に入ると、いろいろの小鳥が渡って来ます。群れて来るのが多いので
突然庭の木々が揺れて風が吹いているように見えることがあります。
嬉しい出会いのひと時を詠いました。
二席 落葉散る音に踏む音重ねゆく 熊本市 隈部 輝子
(評)秋も終わりを告げるころ、しきりに落葉が散るようになります。その道
を散策している作者。自分の落葉を踏む音とはらはらと散る音を耳で
捉えた一句です。
三席 嘶きの馬柵より霧の晴れてゆく 大牟田市 鹿子生憲二
(評)阿蘇の草原でしょうか。特に霧が深く発生するところです。牛馬の放牧
されたところで馬の嘶きが聞こえます。昼が近づくにつれて霧が次第に
晴れてゆくのです。
入 選
蜩の鳴けばすとんと暮れし山 合志市 岡﨑 浩子
お供へは母の好物なりし柿 熊本市 中野しずこ
去るわれになびき止まざる雨の萩 合志市 坂田美代子
つれづれに生きし来し方大夕焼 熊本市 南 幸子
整然と米俵積む里の秋 熊本市 牧野 立身
朝霧の光に濡るるスニーカー 合志市 佐澤 俊子
名月や触れんばかりに天守閣 熊本市 石橋みどり
鳥声の次々突きたる熟柿 熊本市 牧野 保子
裏方を終へて葉桜散りて行く 熊本市 西本 丈正
災害をのがれ稲穂は風に揺れ 御船町 田中眞知子
ふるさとへ杖を支への盆帰り 菊池市 宮本 敏子
栗飯の香りゆたかに夕暮るる 熊本市 田中 悦子
コスモスの波間の隙間偉人像 御船町 丹生 則子
色々のおしろい花の散歩道 益城町 福永 克己
紫陽花に近づくほどに枯れそめし 熊本市 榎本ハツ子
草紅葉犬と寝ころぶ媼かな 山鹿市 本田 孝子
稲刈を待つ間のこころもぞもぞと 熊本市 貴田 雄介
秋深し我が人生をふりかへり 熊本市 藤本 輝子
萩の花こぞりて咲いてをりにけり 熊本市 真野 幸子
青柿の色づく日々やさとこひし 熊本市 松田留以子
穂芒の風にゆれ居る阿蘇路かな 熊本市 藤岡 宏仁
暮れなづむ道に銀杏の舞ひ散りぬ 熊本市 近浦眞智子
選者吟 眞一郎
戦など忘れて欲しき星月夜
どれもみな忙しく舞ふ秋の蝶
逃げ足の遅くなりたる秋の蠅
「奥の菊道」俳句コンテストは
これから少しずつ消えていってしまうかもしれない
美しい自然の風景や懐かしい生活が残る
熊本県内の故郷の情景を俳句に詠んでいただき
その俳句を広くご紹介していくことで
大切なことを見失ってしまった現代の日本社会への
故郷からの最後のメッセージを伝えていくことを
目的とした俳句コンテストです。
熊本県内の故郷に吟行いただき、そこで詠まれた皆様の俳句を
「奥の菊道」俳句コンテストにご応募ください。
このホームページの「旅行」のページに掲載されている俳句は
過去12回の俳句コンテストの入賞作品です。
一句一句の俳句を読み進めていただければ、
素敵な心の旅のお時間になることでしょう。