「奥の菊道」俳句会

「奥の菊道」俳句会:入選句

令和5年1月31日締め切り分 応募句より     井芹眞一郎 選

 

一席 鞍岳の鞍を正して山眠る    菊池市 川口 隆子

(評)阿蘇外輪山の一角に鞍岳がある。どこから見ても馬の鞍の形をしていることから名づけられた山である。「鞍を正して」がいかにも詩的で端正な冬の

姿を想像させる。

 

二席 手作りの凧のよろこぶ青い空  合志市 佐澤 俊子 

(評)お天気に恵まれた日、手作りの凧が見事に空に舞った。凧が喜んでいると見た一句。

 

三席 鳥声の日に日に響き春隣り   熊本市 牧野 保子

(評)暖かくなると恋の季節に入る鳥たち。囀る声が次第に大きくなっていく。

 木枯に押され押されて赤暖簾       熊本市 谷川 光正

 闘病も看取りも書きし日記閉づ      合志市 坂田 美代子

 農始父の遺愛の刀摩れ鍬        大牟田市 鹿子生 憲二

 寒禽の声の尖りて空を刺す        合志市 岡崎 浩子

 神籤結ふ神苑深く梅ふふむ        熊本市 稲田 夏子 

 峰寺の雪は浄土の径めきし        山鹿市 本田 孝子

 枝先の空に張り出す春隣         熊本市 石橋 みどり

 一鳥の光となりて春近し         菊池市 渡辺 あや子

 社より声朗らかに初鴉          菊池市 日野 智子

 水仙のま白き香り供華として       合志市 高村 聖恵

 仰ぎつつ友を偲びし星月夜        熊本市 南 幸子

 そこここに雀啄む刈田中         菊池市 宮本 敏子

 大木の木肌つやめき春近し        菊池市 前田 紀子

 来し方を静かに偲ぶ年賀状        熊本市 勝木 睿子

 一声や神鼓に応ふ初鴉          菊池市 川口 一子

 鍵穴の小さきに悴く指の先        御船町 丹生 則子

 強風を耐へしのびたる枯木山       熊本市 牧野 立身

 臘梅の香り集めて道祖神         熊本市 中野 しずこ

 春の日を分けあふ草に教えられ      御船町 田中 眞知子

 初詣人をかき分けつつ進む        熊本市 隈部 輝子

 秋の野を黄金にそめて波走る       熊本市 西本 丈正

 そぞろ寒一枚羽織る夕べかな       熊本市 藤岡 宏仁

 稜線の彼方に集ふ鶴の群         熊本市 真野 幸子

 木がらしの吹きすさびゐる窓の外     熊本市 榎本 ハツ子

 初燕天の広さを思ふまま         益城町 福永 克己

 お揃ひでみんな楽しくおせち食ぶ     熊本市 漆島 淑子

 雪ふりて阿蘇の噴煙まつすぐに      熊本市 藤淵 正素

 はらはらと惜しみつつ散る桜かな     熊本市 田中 洋子

 空晴れてするどく響く鵙の声       熊本市 水田 博

 シクラメン赤とピンクと競い合ふ     熊本市 塚本 成子

 

選者吟

   休耕地埋めつくしたる花薺      眞一郎

 

「奥の菊道」俳句会:作品募集

ダウンロード
「奥の菊道」俳句会:応募用紙/令和5年4月30日締め切り分
「奥の菊道」俳句会:応募用紙4.pdf
PDFファイル 190.5 KB

令和4年10月31日締め切り分 応募句より      井芹眞一郎 選

 

一席 いくたびも病窓かすめ燕去ぬ  合志市 坂田 美代子

(評)病院に入院されたときの光景である。燕が秋になって南方へ帰る季節に

なった。何度も病室の窓をかすめて自分に別れを惜しんでいるように見えた。

退院の待ち遠しい日々が続く。

 

二席 一山に手招きさるる紅葉かな  熊本市 牧野 保子

(評)いよいよ紅葉の美しい季節になった。行きたいと思う心はあるのだが、

繁忙に追われている。手招きされていると自分の気持ちを置き替えた一句。

 

三席 雲払ひ雲にかくれて十三夜   熊本市 稲田 夏子

(評)陰暦九月十三日の夜の月である。「後の月」とも言うが、その月を愛でながら一喜一憂している様子が想像される。

 

令和4年7月31日締め切り分 応募句より     井芹眞一郎 選

 

一席 望郷の想ひひとしほ盆の月   熊本市 稲田 夏子

(評)今年の盆の月はまだ先のことだが、いずれにしてもお盆に先祖を迎える時期に月を仰ぎながら思いを深くする気持ちには誰もが共感を覚えることでしょう。掲句にはことに故郷を偲ぶ気持ちが余韻を深くしています。

 

二席 若竹の山より美しき鳥語    合志市 坂田 美代子

(評)地上に出た筍が皮を脱いでぐんぐん伸びて若葉を広げます。そのみずみずしい篁の間から美しい鳥の声が聞こえてくるといういうのです。鶯の明るい声かもしれません。若竹という言葉に込められたイメージが広がります。

 

三席 夕菅へ星の布石の始まりぬ  大牟田市 鹿子生 憲二

(評)阿蘇の草原に行くと午後三時頃から咲き始めた夕菅が五時過ぎには一斉に広がる光景に出会うことが出来ます。夜に咲き朝には凋んでしまうことから儚い花でもありますが、夕暮れの星が見え始めていよいよ一面の花との出会いの感動が伝わります。

 

「奥の菊道」俳句コンテスト

 「奥の菊道」俳句コンテストは

これから少しずつ消えていってしまうかもしれない

美しい自然の風景や謙虚な生活が残る

熊本県内の山里・故郷の情景を俳句に詠んでいただき

 

その俳句を広くご紹介していくことで

大切なことを見失ってしまった現代の日本社会への

故郷からの最後のメッセージを伝えていくことを

目的とした俳句コンテストです。

 

 熊本県内の山里に吟行いただき、そこで詠まれた皆様の俳句を

「奥の菊道」俳句コンテストにご応募ください。

 

 このホームページの「旅行」のページに掲載されている俳句は

これまでの俳句コンテストの入賞作品です。

一句一句の俳句を読み進めていただければ、

素敵な心の旅のお時間になることでしょう。

 

「奥の菊道」俳句コンテスト:入賞者の皆様

弊社が企画・運営する「緑川行燈」企画では、これまでの多くの俳人たちに

詠まれてきた有名な俳句をご紹介しています。そちらも是非ご覧ください。

「緑川行燈」:midorikawaandon.com