「奥の菊道」俳句会

「奥の菊道」俳句会:入選句

令和6年1月31日締め切り分 応募句より      井芹眞一郎 選

 

一席 滝涸れて音を忘れてをりにけり    大牟田市 鹿子生憲二

(評)冬は水が涸れて川や沼の水がめっきり少なくなります。これは春の芽立

   ちを前に木々が水を貯える為と言われています。さて、掲句は川の水が

   少なくなって滝音が消えてしまったものを詠いましたが、滝が「音を

   忘れている」と面白く擬人法で表現している一句です。

 

二席 海苔粗朶へたつぷりと潮満ちてきし 合志市 坂田美代子 

(評)有明海に見かける養殖海苔の光景です。夏の間に貝殻に種付けをして冷  

   蔵庫に保存したものを暖かくなる前に海に浮べます。潮の干満によって 

   春には新海苔が採れるのです。「たつぷりと」がいかにも養殖場らしい  

   詠いです。

 

三席 静かなる夫婦ふたりの二日かな   熊本市 中野 静子

(評)二日とは正月二日のことです。昔と違って最近は家族も遠く離れて住む

   ところが多くなりました。さらに今回はコロナ禍などで行動も制限され  

   たのではないでしょうか。

 

入 選 

走り根の支へるいのち大冬木     熊本市 稲田 夏子

冬帝や雲一寸も動かざる       熊本市 石橋 みどり     

日を浴びてポインセチアのある窓辺  合志市 岡﨑 浩子

鬼すでに独楽に夢中やかくれんぼ   千葉県 中宮 順子      

けたたまし羽音高らか鴨来たる    菊池市 宮本 敏子

街の灯の縦横無尽十二月       山鹿市 本田 孝子

一年を悲喜こもごもに日記果つ    熊本市 松田 留以子

冬晴れや稜線しるき金峰山      熊本市 田中 悦子 

笹鳴に応へるごとく夕支度      熊本市 貴田 雄介   

注連飾残る稲穂に雀来る       熊本市 真野 幸子

寒中も人影あまた草千里       御船町 丹生 則子

幾年を重ねたる味雑煮餅       御船町 田中 眞知子

許されて難病癒えて初日の出     益城町 福永 克己

冬の夜月冴えざえと上りけり     熊本市 南 幸子

大空の澄みわたるもと山眠る     熊本市 西本 丈正

選者吟                  眞一郎

     戸締りに出でたる空に枯木星

     地底には滾るマグマや山眠る

     沈丁の赤を極めてゐる蕾

 

「奥の菊道」俳句会:作品募集

ダウンロード
「奥の菊道」俳句会:応募用紙/令和6年4月30日
「奥の菊道」俳句会:応募用紙8.pdf
PDFファイル 191.5 KB

「奥の菊道」俳句コンテスト

 「奥の菊道」俳句コンテストは

これから少しずつ消えていってしまうかもしれない

美しい自然の風景や懐かしい生活が残る

熊本県内の故郷の情景を俳句に詠んでいただき

 

その俳句を広くご紹介していくことで

大切なことを見失ってしまった現代の日本社会への

故郷からの最後のメッセージを伝えていくことを

目的とした俳句コンテストです。

 

 熊本県内の故郷に吟行いただき、そこで詠まれた皆様の俳句を

「奥の菊道」俳句コンテストにご応募ください。

 

 このホームページの「心の旅」に掲載されている俳句は

 過去12回の「奥の菊道」俳句コンテストの入賞作品と

上記の「奥の菊道」俳句会の優秀作品です。

一句一句の俳句を読み進めていただければ、

素敵な心の旅のお時間になることでしょう。

 

「奥の菊道」俳句コンテスト:入賞者の皆様

弊社が企画・運営する「緑川行燈」企画では、これまでの多くの俳人たちに

詠まれてきた有名な俳句をご紹介しています。そちらも是非ご覧ください。

「緑川行燈」:midorikawaandon.com